膝の痛み

膝の痛み

 膝関節は日常生活においてもスポーツの場面でもなにかと負担のかかる関節です。

 捻ってしまったりなど突発的な外傷もあれば、筋肉や腱、軟骨などに断続的に負担がかかり痛んでくるものもあります。

 

 痛みの原因は何か、どの筋肉が硬くなり関節の動きを妨げているのか、弱くなっている筋肉はないか、股関節や足関節とのバランスはどうかなど細かく探っていく必要があります。

膝の内側が痛い

半月板損傷

 大腿骨(太もも)と脛骨(すね)の間にあり、クッションや関節の適合性を高める役割を担っている半月板が傷ついた状態。

 体重がかかった状態で膝を捻ってしまう等で発生。

  • 膝の曲げ伸ばしで痛い
  • 膝の曲げ伸ばしでひっかかる感じ
  • 膝が急に曲げ伸ばしできなくなる(ロッキング) 

施術方針

①膝周囲の筋肉を緩める

→膝関節内が滑らかに動くようにすることで、半月板に対する摩擦を軽減させます。そして関節内への血流を促します。血流を良くしないと修復が進みません。

 

 膝関節は曲げ伸ばしに伴い、脛骨(スネの骨)が大腿骨(太ももの骨)に対してわずかに回旋します。また内側半月板はこの動きに合わせて前後方向にわずかに動きます。この一連の動きがあることで可動域いっぱいの動作が可能になっています。


 この回旋を妨げてしまったり、捻れを生じさせてしまうのが大腿後側の筋肉である大腿二頭筋や半腱半膜様筋の偏った硬さになります。


 大腿後部外側の大腿二頭筋、または内側の半腱半膜様筋の一方が硬く縮むとそちら側に捻れてしまい、半月板に負担がかかりやすくなります。


 特に内側の半腱半膜様筋の一部の筋繊維は内側半月板に付着しているため、曲げ伸ばしに伴う半月板の動きも制限してしまいます。

 

 そのためこれらの筋肉を緩めることが大事になります。



②股関節、骨盤周囲を緩める

→膝にかかる負担を分散させるために股関節などの可動性を高めることが大事になります。

 

 股関節の筋肉が硬く可動性が悪くなっていると、本来なら股関節が負担する分の動きを他の関節や筋肉が代償しなければなりません。


 股関節の硬さの具合によっては大腿二頭筋に張りを強くもたらしてしまったり、半腱半膜様筋を硬くしてしまったりと偏りが出ることもあります。


 そのため膝を施術する上で、股関節の可動性を改善させることも重要になってくるのです。



※重度な損傷がある場合は手術により損傷部位の切除や縫合をする必要があるため、まずは整形外科にて診察、検査することをおすすめします。

鵞足炎

 太ももにある筋肉の一部である縫工筋、薄筋、半腱様筋が付着する膝内側やや下(関節面よりも数センチ下)に慢性炎症がある状態。

 

 膝の曲げ伸ばしの際に筋肉・腱と骨や膝内側側副靭帯がこすれて炎症が発生。

  • 膝を伸ばし切ると痛い
  • 深くしゃがむと痛い
  • 走ってて接地時から後ろに蹴り出すまでが痛い

施術方針

①まずは運動を中止し安静にすることが第一

 →炎症を起こしてますので更なる炎症を防ぎます。

 

②縫工筋、薄筋、半腱様筋を緩める

膝内側につながる筋肉を緩めることで、患部にかかる摩擦刺激を低減させます

 

 

③骨盤、腰、股関節周囲を緩める

→膝の局所にかかる負担を分散できるように、股関節などの可動性を高めることが大事になります。

 

 上記の内側半月板損傷の項目でも記しましたが、股関節の状態によっては大腿内側にある筋肉に偏って張りをもたらす場合があります。この状態を解消するために股関節の筋肉を緩め、可動性を改善させることが必要になります。


 


 

④足部アーチの強化

→足首が回内足の場合(土踏まずがつぶれて体重が内側に落ちてしまってる状態)は足部や足首のトレーニングをして頂きます。そうすることで荷重時に脚の内側にかかる負担を軽減させることができます。

膝の外側が痛い

【半月板損傷】(上記に準ずる)

腸脛靭帯炎

 腸脛靭帯(臀部の外側から脛骨外側上部まで太ももの外側を縦に走っている筋膜様の繊維)と大腿骨外側上顆(膝外側少し上の出っ張り)が膝関節屈伸のたびに擦れ合い局所的な炎症が起きている状態。腸脛靭帯そのもの又は脂肪組織の炎症。


  • 走行時、歩行時に体重がかかると痛い
  • 触ると痛い
  • 安静にすると痛くなくなるが運動を再開すると再び痛くなる

施術方針

腸脛靭帯の緊張を和らげる

→臀部の筋肉(大腿筋膜張筋や中殿筋など)をマッサージや鍼などで緩めます。

 

      この筋肉を緩めることで腸脛靭帯の緊張が和らぎ、外側上顆との摩擦が低減します。



②大腿外側と内側の筋肉の硬さや筋力のバランスを整える

→股関節の外転筋と内転筋の強さが釣り合うと荷重時の安定感が増し、過度な筋緊張がなくなります。

 

 また、内転筋の筋力が弱くO脚の様な状態になっていると、より腸脛靭帯が外側上顆に押し付けられるようになってしまい、摩擦が増加し炎症を起こしてしまいます。


 その場合には股関節から膝にかけてアライメント(骨の位置関係)を改善させるために、内転筋の強化が必要になります。

 


③中殿筋(股関節外転筋)を鍛える

→中殿筋が弱いとすぐに筋肉疲労を起こし硬くなってしまったり、荷重の際に脚と股関節・骨盤の位置関係を保てなくなり、さらに筋緊張が増してしまいます。

 

 

膝蓋靭帯炎

 膝蓋骨(いわゆる膝のお皿)のすぐ下にある膝蓋靭帯が炎症を起こしているもの。

 

 大腿四頭筋(前ももの筋肉)の柔軟性低下や使い過ぎが主な原因。

 

 

施術方針

①大腿四頭筋を緩める

→大腿四頭筋が疲労し硬くなっていると、その先に繋がる膝蓋靭帯に対する牽引力が高まってしまいます。

 

 この状態で繰り返し運動を行うと膝蓋靭帯への負荷により炎症を起こしてしまいます。

 

 


②股関節、骨盤周囲、足関節を緩める

→膝だけの問題ではないので、隣り合う関節である股関節や骨盤周囲、そして足関節の可動性を高めることで、脚全体の連動性を改善し負担が分散するようにします。

 

 

③太ももの前側の筋肉を使ってしまうクセを改善する

日常や運動において大腿四頭筋(前もも)ばかり使ってしまうクセがついている可能性があります


 この大腿四頭筋は膝の筋肉だと思ってください。理想的な体の使い方はより体の中心に近い部位を使うことです。

 つまり股関節を中心に使う体の動かし方を習得することが大事になります。


 そのためには大臀筋やハムストリングといった股関節の伸展筋を使う感覚を覚えることから始めます。


 そうすることで日常の、立ち上がり、しゃがむ、歩く、階段の昇り降りなどの動作、運動時の様々な動きにおいて膝関節(大腿四頭筋)を中心とした体の使い方ではなく、股関節を中心に動作を行えるようになり膝にかかる負担が減り、さらには運動パフォーマンスの向上にもつながります。

 

 

 

※セルフケアとしてはアイシングとセルフマッサージが大切になります。

 大腿四頭筋のストレッチは膝蓋靭帯を牽引してしまうため、痛みがあるうちは難しいです。

 

 成長期の場合はオスグッド・シュラッター病といって、膝蓋靭帯が付着するスネの最上部が出っ張って炎症を起こしてきます。

 膝蓋靭帯炎との違いは骨の炎症という点です。