足関節後方の三角骨(過剰骨、距骨後方突起が分離したもの)が引き起こす痛み。
小児期に距骨の後方に発生した小さな骨が、本来であれば成長とともに距骨に癒合し後方突起になるはずのものが、癒合せずに遊離骨になっている。
もしくは癒合したが運動による繰り返される刺激で骨折した場合などに見られる。
レントゲンやCT検査により診断される。
・三角骨周囲の炎症による痛み
・足関節底屈時に三角骨が脛骨と踵骨に挟まれることで発生する痛み
・三角骨のすぐそばを通過する長母趾屈筋腱の炎症を併発した痛み
足関節の底屈動作(ルルベ、ポワント)の繰り返しが発症のきっかけとなる。ただし三角骨があっても発症しない場合も多々ある。
施術方針
①長母趾屈筋や下腿三頭筋など足関節に関わる筋肉を緩める
→足関節の可動域が改善されることで三角骨の挟み込みの具合が変化するか確かめます。
→長母趾屈筋の張力が減ることで痛みが変化するか確かめます。
②足部アーチの強化
→足部アーチが低下すると足関節後方を通過する長母趾屈筋腱の張力が高まってしまうため、荷重しても崩れない強いアーチを作っていきます。
③股関節、骨盤周囲、背骨周囲を緩める
→無理なターンアウトをしていると膝から下、足関節周り、足部の筋肉が過剰に使われてしまい、足関節の可動域や位置が悪くなるため、十分にターンアウトをコントロールできるように緩めていきます。
※保存療法で改善しない場合は手術の対象になります。その前にできうる施術、トレーニング、テクニックの改善に取り組んでいくことが大切です。
アキレス腱炎は腱そのものの炎症、周囲炎はアキレス腱を覆ている膜など周囲組織の炎症。
なぜ発症するのか
①ふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)が硬い
②筋力不足(現在の筋力とレッスン量、強度がつりあっていない)
③足関節捻挫をしたことがあり、関節が不安定なために筋肉が過剰に働いてしまう。
④膝から下、足部の筋力で無理やり立っている、ターンアウトしている。
施術方針
①ふくらはぎの筋肉をマッサージや鍼で緩める
→ふくらはぎの筋肉の硬さはアキレス腱の張力を高めてしまいます。
→緩めばアキレス腱の負担が減り、血流も良くなるので炎症が引きやすくなり痛みが軽減していきます。
②股関節、骨盤周囲、上半身を緩める
→股関節からの十分なターンアウトを引き出すためにしっかり緩めます。
→無理なターンアウトは膝から下、足部の筋肉が過剰に働き硬くなってしまうので、この施術も重要になります。
③足関節、足部の筋力強化
→足関節の安定化をはかります。
→不安定なルルベ、ポワントは筋緊張をもたらすためアキレス腱に負担がかかります。
※痛みが強い間は患部は使わないようにし、他部位のトレーニングなどを行い、ケガを再発させないように筋力強化をはかってください。
急激な筋肉の収縮やオーバーストレッチなどにより筋繊維が切れてしまったもの。急激な痛みでその場ですぐにわかるものもあれば、翌日になって強い筋肉痛の様な痛さで気づくこともある。
発症しがちな動作としては
①ジャンプの着地または踏み切り
②ジャンプからの前後スプリッツの瞬間
③オーバーストレッチ
などがある。
施術方針
①受傷後2~3日はアイシングで冷却します。
②直後は応急処置程度にとどめ、翌日から施術開始します。
③受傷している筋肉に鍼施術。患部は炎症を鎮めるため、その周囲は患部にかかる張力を軽減させるために緩ませるように鍼施術します。
④オイルマッサージ。受傷した筋肉の繊維方向に沿って施術。切れた断面の繊維の向きが揃うようにおこないます。痛みを伴う施術ではあるが瘢痕をできるだけ残さないようにするために重要になります。
⑤受傷した筋肉が関わる関節を緩め、可動域が広がるようにマッサージや鍼をおこないます。
⑥初期はストレッチは厳禁です。ある程度日数が経ち炎症が収まってきてからおこないましょう。痛みを感じる手前でとめ、最初は伸びませんが無理をしてはいけません。再受傷すると治りにくくなってしまいます。
⑦バレエ復帰後も痛みが無いからといって元のレベルでいきなりやらないようにして下さい。筋力が低下してるため再受傷や二次被害が出てくる可能性があります。
予防方法
①徐々にしっかりウォームアップ。筋肉が温まってる方が伸び縮みしやすいです。
②現在の筋力に見合った運動強度内でバレエをおこないましょう。
③普段からストレッチなどで自分の体の状態を感じとるようにし、それによってセルフケアを増やしたり、治療院に通ってケアをしてもらうようにして下さい。
バレエでは第二中足骨の疲労骨折が多い。
人により足の形状は様々であるが第二中足骨が一番長い場合だと、ルルベやポワントの際に第二中足骨の長軸方向に圧縮力が加わり、これを繰り返すことで骨が少しずつ傷んでくるとされている。
しかしながら同じような足の形状でも発症しないバレエダンサーもいるので、テクニックの問題や骨の強度、栄養状態なども影響してると考えられる。
施術方針
①まず安静にする
→疲労骨折や骨折は骨に負荷がかかると修復されにくいです。
→患部以外のトレーニングは積極的に行いましょう。
②足部、足関節の筋肉を緩める
→血流を良くし修復を促します。
→筋肉や関節の硬さは動作時の衝撃吸収の妨げになるため、力が広く分散するようにしっかり緩めていきます。
③股関節、骨盤周囲、上半身を緩める
→股関節からの十分なターンアウトを引き出すためにしっかり緩めていきます。
→無理なターンアウトは膝から下、足部の筋肉を過剰に働かせてしまうためこの施術が重要になります。
脛骨(すね)の下1/3付近の痛み。骨膜の炎症。
ふくらはぎの筋肉を覆っている筋膜と、脛骨骨膜が接している部位に繰り返し負荷がかかり発症。オーバーユース。脛骨の疲労骨折につながることもある。
施術方針
①ふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)をマッサージや鍼で緩める
→筋肉が疲労を起こし硬くなっていると、覆っている筋膜の張力が高まり、つながっている脛骨骨膜への牽引力を高めてしまいます。
②足関節周囲の筋肉、足部の筋肉を緩める
→足関節可動域の改善、関節がスムーズに動くようになることで筋肉の負担を軽減させます。
③足部アーチのトレーニング
→アーチが低下していると下腿の内側から足関節内側にかけて張力が高まってしまいます。
→アーチが上がることで筋肉や骨膜への負荷が減り次第に痛みが取れてきます。
※痛みが強い時はレッスンを休むことも大切です。
アイシングやアーチのトレーニングなどセルフケアが重要になってきます。
繰り返しやすいケガなので筋力強化も必要です。
足の裏にある足底腱膜(かかとから足趾の付け根まで覆っている腱様の膜)が、荷重負荷などで微細な損傷を繰り返し、炎症を起こしているもの。
かかとの少し前、内側が特に痛むポイント。
かかとの骨に骨棘ができている場合もあるが、必ずしも痛みを引き起こすわけではない。
バレエではジャンプの着地やプリエなどで足底腱膜に負荷がかかる。
ポワントで立つのは痛くないこともある。
施術方針
①ふくらはぎの筋肉を緩める
→ふくらはぎの筋肉が疲労で硬くなり縮まっていると、アキレス腱を介してかかとの骨を後上方に牽引してしまいます。
→その結果、足底腱膜が引き伸ばされ傷んでくるという流れになりますので、ふくらはぎの筋肉をマッサージや鍼でしっかり緩めていきます。
②足底の筋肉は緩めない
→足底筋を緩めてしまうと荷重の際に足底筋の支えがなく、足全体が縦横に広がってしまいます。
→その結果、足底腱膜が引き伸ばされ余計に負担がかかってしまいます。
③アーチの強化
→荷重の際にアーチがつぶれないように、足底筋を強化していきます。足底腱膜が引き伸ばされないようにしていきます。
膝関節内でクッションの役割や、関節面の適合性を高めている半月板が傷ついた状態。
ジャンプの着地やプリエなどで膝関節に負荷がかかり発症する
施術方針
①大腿四頭筋やハムストリングスを緩める
→膝関節内で半月板と大腿骨との滑走性を高めるために膝に関わる筋肉を緩めていきます。
②股関節、骨盤周囲、上半身を緩める
→股関節から十分にターンアウトできるようにしっかり緩めていきます。
→膝から下を外側に回すようなターンアウトだと、膝関節が捻じれてしまうからです。
→膝関節が捻じれたまま屈伸動作や着地をすると半月板が傷む恐れがあるため、この施術が重要になります。
※半月板の損傷の程度や仕方によっては手術の適応になりますので、必ず病院も受診して下さい。
膝蓋骨(いわゆる膝のお皿)のすぐ下にある膝蓋靭帯が炎症を起こしているもの。
大腿四頭筋の柔軟性低下や使い過ぎが主な原因。
施術方針
①大腿四頭筋を緩める
→大腿四頭筋が疲労し硬くなっていると、膝蓋靭帯の張力が高まってしまい傷んできます。
②股関節、骨盤周囲、上半身を緩める
→股関節からしっかりターンアウトできないと、バレエの各動作において大腿四頭筋が働いてしまう場面が多くなってしまいます。
※セルフケアとしてはアイシングとセルフマッサージが大切になります。
大腿四頭筋のストレッチは膝蓋靭帯を牽引してしまうため、痛みがあるうちは難しいです。
成長期の場合はオスグッド・シュラッター病といって、膝蓋靭帯が付着するスネの最上部が出っ張って炎症を起こしてきます。
膝蓋靭帯炎との違いは骨の炎症という点です。
・足底の第一趾の付け根にある2つの粒のような骨の障害(炎症、骨折など)。
・腱や筋肉の機能をサポートしている。
・接地時や、第一趾を反らせると痛い。
・地面から受ける衝撃や、足底筋収縮時の牽引力で負担がかかり傷んでくる。
施術方針
①足底筋を緩める
→足底筋が硬く縮まると種子骨への牽引力が強まってしまいます。
②股関節、骨盤周囲、上半身を緩める
→無理にターンアウトすると足底の内側(第一趾側)に重心が落ち、種子骨に負担がかかるため、股関節からの十分なターンアウトを引き出すためにしっかり緩めていきます。
③種子骨への直接的な衝撃を避けるため、サポーターなどを装着することも検討しましょう。
内くるぶしの前下方にある外脛骨(舟状骨の内側にある過剰骨)に痛みがある状態。
施術方針
①後脛骨筋など足関節周囲の筋肉を緩める
→後脛骨筋の腱は舟状骨と外脛骨に付着するため、硬くなっていると牽引力が増してしまいます。
②股関節、骨盤周囲、上半身を緩める
→股関節からしっかりターンアウトできるようにしっかり緩めていきます。
→無理にターンアウトすると足底内側よりに重心が落ちてしまいアーチがつぶれてしまうため、この施術が必要になります。
③足部アーチの強化
→アーチが低下していると、荷重の際に後脛骨筋腱が引き伸ばされ牽引力が増してしまうからです。
④普段はくシューズを変える
→外脛骨にシューズが当たると、その刺激で炎症を起こしてしまうことがあります。
→ジョギングシューズなど当たる部分が柔らかいものにすることをお勧めします。
・バレエでは腰背部の過伸展、過屈曲動作が多く腰椎部への負担が大きい。
腰椎分離症や疲労骨折、筋筋膜性腰痛を引き起こす。
・女性ダンサーでは腰部伸展時(腰背を後ろに反らす)に痛みを誘発することが多い。
特に左側が多く、ピルエットなど回転時に左脚が軸になることが多いためと考えられる。
・男性ダンサーではリフト時やジャンプの着地時に痛むことが多い。
施術方針
①腰背部の筋肉を緩める
→筋肉が疲労し硬い状態だと、上下の腰椎同士の滑走性が悪くなり負担がかかります。
②身体前面の筋肉を緩める
→腰背伸展時の抵抗を減らすために、動きを制限してしまう前面の筋肉を緩めます。
③背骨や胸郭を緩める
→背骨全体で動きを分散できるように、背筋をはじめ脇や胸筋などしっかり緩めていきます。
※下位腰部だけで伸展動作が起こると負担が大きいので、腰だけを緩めるのはとても危険な行為になります。